本専攻修了生・松岡佐知さん(現・日本学術振興会特別研究員/国立民族学博物館外来研究員)が、在学中の研究を発展させて、『南インドに生きる医療ー制度と多元性のあいだ』(風響社)を出版しました。
http://www.fukyo.co.jp/author/a217102.html
治療の効果だけでなく、「病気をいかに経験するか」という眼差しで、社会や人々にとっての医療という社会システムについて、南インドを事例に量的・質的データを元に考察したものです。包括的で実存的な医療のありようを描出するため、特異な医療多元性を示す南インドで、無資格の伝統的治療師のあり方を通して、医療制度の外から医療を分析したことに特徴があります。「病気をいかに経験するか」は、病気の経過だけでなく、その後の生き方にも大きく関わり、病気の再発や予後にも影響します。医療保険制度が逼迫する現代にあって、制度により画一化されない医療や、医療の体裁をとらない社会に根付く医療的な要素にも光をあてることで、新たな医療のあり方が見え、それぞれの人が望む生や死のありかたに寄り添える社会に近接できるのではないでしょうか。